楷書(かいしょ)

蝶恋花   李淑一に答える  1957年5月11日

 

 

我失驕楊君失柳

楊柳軽颺 直上重霄九

問訊呉剛何所有

呉剛捧出桂花酒

 

寂寞嫦娥舒広袖

万里長空 且為忠魂舞

忽報人間曾伏虎

涙飛頓作傾盆雨

 

 

[日本語版]

 

ちょうれんか  りしゅくいつ

 

蝶  恋 花   李淑一に答える  1957年5月11日

 

われ ほこりたかきよう うしな   りゅう

我は     楊を 失い 君は柳を失う 

ようりゅう かる まいあが ただ たか てん きわみ

楊柳   軽く 颺り  直ちに重き 霄の九に上る

ごごう も   なに  と たず

呉剛に有てるは何ぞと問い訊ねれば

   ささ い    けいか さけ

呉剛は捧げ出だす 桂花の 酒

 

せきばく じょうが ひろ そで ひろ

寂寞たる嫦娥   広き袖を 舒げ

ばんり ちょうく まず ちゅうこん た  ま

万里の長空に   且 忠魂の  為めに舞う

だしぬけに ひとのよ すで とら くだ    しら

忽に   人間は  曾に虎を 伏せりと報せやれば

なみだと たちまち ぼん かたむ  あめ な

涙飛びて 頓   盆を傾くる 雨と作らん

 

 私は敵に強迫されても屈しない誇らかな楊(開慧)を失い、君は柳(直荀)同志を失った。楊と柳は名前の楊.柳の白い絮のように軽やかに、一直線にと、九層の天の最上部にまで昇っていった。月の世界では桂を斬っている仙人呉剛に、なにかあるかね、と二人が問うて、呉剛が桂花酒を捧げ出すということもあっただろう。

 淋しく月世界に暮らしてきた嫦娥も、広い袖をひらひらさせて、高い大空で、人民に真心を尽くした魂のために、しばらく舞うことだろう。そこへ、突然、下界で虎を退治した(革命が勝利した)という報せをとどけてやったら、彼らの涙はあふれ落ち、盆を傾けてなかの水をこぼすような、大雨となって、降ってくるだろう。

 

 

[注]

 この詞は毛沢東同志が1957年5月11日に湖南長沙の第十中学国語教師李淑一同志に書き送ったものである。詞の「柳」は李淑一同志の夫柳直荀(りゅうちょくじゅん)烈士(革命のため犠牲になった人を烈士とよぶ)を指す。彼は毛沢東同志の古い戦友であって、1923年中国共産党に加入、湖南省政府委員、湖南省農民協会秘書長に任じ、南昌蜂起に参加、1933年湖北洪湖戦役中犠牲となった。「驕楊」とは楊開慧(ようかいけい)烈士を指す。彼女は1930年、赤軍が長沙を退出したあと反動派の何健(かけん)に殺害された。彼女は李淑一同志の親友であった。